X308 JOURNAL

X308  ·  THE LEAPER

跳ばない猫

ジャガーといえば、ボンネットで跳ねる猫。でも、うちのXJにはいない。それを選んだ理由の話。

日誌·2026.06.13·約3分

ジャガーといえば、あれを思う人が多いはずです。ボンネットの先で前に跳ぶ、銀色の猫。「リーパー」と呼ばれるマスコットです。

うちのXJには、それがいません。

日本では、リーパーはオプションでした。付けたい人が付ける装備です。付ける人は多くて、だから「ジャガー=跳ねる猫」のイメージが、これだけ広まっている。象徴だし、憧れの形でもある。新車で買って、わざわざ追加して、ボンネットの先に一つ載せる。あれは所有のうれしさの、分かりやすい印だったのだと思います。外すのがもったいない、という気持ちは、よく分かります。

ボンネット先端のグロウラー(ジャガーの顔のエンブレム)とグリル
跳ねる猫の代わりに、顔だけの猫=グロウラーが正面を睨む。

うちのボンネットの先にいるのは、顔だけです。牙をむいて正面を睨む、ジャガーの頭。「グロウラー」と呼ばれます。手のひらに乗るくらいの小ささで、たてがみの一本まで彫り込んである。遠目には地味でも、近づくと、けっこう凶暴な顔です。跳ばないけれど、こっちをじっと見ている。

ここからは好みの話です。私は、リーパーがいないほうが好きです。ボンネットがよく見えるから。X308のボンネットは、平らな板ではありません。中央が盛り上がって、左右へ面が流れていく。その面の張りが、この車でいちばん好きなところです。

晴れた日に少し離れて眺めると、緑のボンネットに空がまるごと映ります。雲が動けば、映り込みも動く。中央の高くなったところで光が一度折れて、左右へすべっていく。跳ねる猫が一つ立っていると、視線はそこで止まります。何もなければ、緑の面と映り込みが、フロントガラスの手前まで続く。私が見ていたいのは、そっちでした。

グロウラーの顔は、その邪魔をしません。低くて、小さくて、面の流れのなかにちょこんと座っている。睨んではいるけれど、出しゃばらない。跳ばない猫の、ちょうどいい距離感だと思っています。